NPO法人信越トレイルクラブは、2003年9月に発足し、翌2004年2月にNPO法人(特定非営利活動法人)として長野県より認可を受けました。
信越トレイルを通して地域連携を図り、自然・文化・歴史といった地域資源を再認識し、自然を求めてトレイルを訪れる人々との交流を通じて、地域の活性化・観光振興に寄与すること、また、人間と自然とが共存する里山の機能を理解するとともに新たな里山のあり方を考え、環境問題への意識を啓発することを目的として活動しています。
この山並みを一つの生態系と捉え、県や市町村の枠を越えて、同じ理念の下、地元住民やボランティアが整備・保全活動を行い、信越地域の宝であるこの里山に誇りと愛着を持つことで、後世に残し伝えていければと考えています。
信越トレイル周辺エリアの貴重な資源が未来に永続できるよう信越トレイルクラブでは以下のガイドラインを定め、実践します。
多様な自然を保全するために、特定の生き物に限らず広く信越トレイル周辺エリアに暮らしている生き物の生活環境を把握します。知らぬ間に自然への負荷を与えすぎることがないよう観察や調査を継続します。
世界的にも稀な豪雪文化や、山と海、両文化の密接な交流の歴史はこの地域の大きな特色です。私たちが日常的に関わり続けてきた自然や文化を、かけがえのない財産とし、学び、伝え、その保全と発展に努めます。
訪れた皆さんには、交通、宿泊、ガイド等、地元サービスの利用を積極的に奨めます。また、さまざまな交流を通じ、信越地域の魅力を認識できるよう推進します。
かつて人々は、ときに優しく、ときに凶暴な、しかしいつも美しい自然と上手につきあっていた。自然の摂理にしたがって、自然の一部として賢く生きてきた。
いつごろからだろうか。人類はひとり知恵を発揮し、さまざまな民族がそれぞれ独自の文化を作り、文明を興し、科学を発展させた。科学は人類に希望と富をもたらした反面、地球、自然を支配し、やがて破壊するまでになった。
産業革命などを経て、とりわけ、このわずか100年ほどのあいだに、地球は危機的な状況に陥ってしまった。
自然は自ら然るべき存在であるから自然と呼ぶのである。自ら然るべき自然に手を加えることがいかに重大な過ちであったかを、われわれは地球環境のさまざまな変化によって知ることとなった。
20世紀に失ったかけがえのない自然を取りもどそうとするのが21世紀に生きる人類に課せられた大きな問題である。21世紀は自然回帰の世紀となるべきである。われわれ人類の思い上がりから行き過ぎてしまった現状を取りもどすための世紀であるべきである。
これからは、人間が行うすべての行動の基礎に「生態系」という理念をおくべきである。
経済産業開発を含むすべての政治活動、経済活動、社会活動、科学研究活動しかりである。
一方で、こういう考え方にも耳を傾ける必要がある。すなわち、「自然を遊ぶことで、自然を知り、理解し、愛着する。愛着することによって、人々のあいだに、その自然を守ろうとする意識が芽生える」。アメリカの自然保護の父、国立公園の父と言われるジョン・ミューアの考え方である。人間は自然と共存するために、自然からさまざまなことを学ばなければならない。自然と遊ぶことの重要性は、自然と人間との正しいかかわりのあり方を学ぶチャンスを得ることにある。
また一方で、地域の発展という課題がある。地域の人々の生活向上、活性化もまた緊要なテーマである。経済発展のみを言うのではない。心の発展、すなわち人々の心を豊かにし活性化させることもまた地域の重要課題である。
幸い、われわれのすぐ身近にすばらしい自然教材がある。二つの国立公園に囲まれ、広大なブナの森を擁し、信越の長い歴史の史跡を擁する環境である。以上の理念に基づいたトレッキングルートをこの地域に設置し、スピードのみが追求されつつある社会で、人間が200年前まで頼ってきた「歩く」というスピードに敢えてもどることによって、かつて見えていたものを再び見つめなおそう、そして、21世紀の地域社会のありかた、正しい自然との付き合い方を探し出そうとするのが、この信越トレイルの目的である。その目的を遂行するために、以下の8項目を揚げる。